【魔界の魚 黒鯛  野島堤防偏.PertU】



■悪魔のササヤキが聞こえる 『ドック堤防・先側(通称:ドック先)』

 この堤防、一見すると危険な釣り場はないように感じるが、実は中廊下側に魔界への入り口がある。
 この入り口は、 ド干潮の時、中廊下側のマルカンに降りる事により危険な扉が開かれる。
 そして、その扉を開くと中廊下まで歩くことができるのだ。

 但し、何年か前の台風でマルカンが更に沈没した為、近年登り降りが難しくなった。
 私のポッチャリ体系では登れなくなったので、沈みマルカンに渡りたい時は中廊下に渡船し行うようにしてる。


 現在、潮が低い時に限り中廊下へ渡船をしているが、一時危険との理由から何年も渡船をしていない時期があった。
 そして、この時期の中廊下は『禁断の釣り場』と称され、誰もがあこがれる釣り場であった。

 渡船をしていない時期に渡りたくなるのが、我々魔界の魚の魅力にはまった釣り師の性(サガ)である。

 当時、各堤防への移動の際、中廊下の横を通過すると、どこからともなく悪魔のササヤキが聞こえてくる。
 「おいで、おいで、クロちゃんが待っているよ!」と・・・。

 こうなると、悪魔に洗脳されている私達には自分の身体を制御する事は不可能。
 必然的に禁断の地へと向かう努力をするのだ。

 しかしこの禁断の地、童謡の歌詞にある「行きは良い良い帰りは怖い」の歌詞通りの展開となる場所で、
 『ドック堤防・先側』から『中廊下』へ行くには楽なのだが、
 『中廊下』から『ドック堤防・先側』へ戻る時は毎回命がけとなる。

 この様に命がけの行動を自分自身の判断で抑制できなくなることが、黒鯛イコール『魔界の魚』と言われる由縁である。(私が勝手に決めた事)

 「なぜ帰りは怖い思いをするのか?」については、私の苦い体験談にてご理解頂こう。



 当時、『禁断の地』は警戒していない魚が多いため、竿を出せば高確率で黒鯛が釣れる場所であった。
 だから悪魔のササヤキを完全無視できないのだ。

 中廊下への順路は、潮位の低い時に水没しているマルカン部分に飛び降り、2箇所沈没が激しく歩くことなできない場所を泳ぎながらか渡る。

 中廊下は下げ潮のポイントと上げ潮のポイントとが分かれており、釣れる可能性が高い場所がそれぞれ異なる。

 下げ潮のポイントは満潮からド干潮まで全ての潮位で釣れるのに対し、上げ潮のポイントは潮位が少し高くなってからの方が断然食いが良い。

 この為、潮位が多少高くなっても『ドック堤防・先側』に戻る気持ちになれないのだ。

 そして、黒鯛を何匹がGETしアタリがポツポツと続くと、更に「もう少し・もう5分」と堤防に戻る時間が伸び伸びになってしまう。

 そう、一旦釣りが始まると悪魔の危険なササヤキに打ち勝てないのだ。
 結果、帰りはマルカン4個分全て(距離・約5m×4回)を泳がなければならない。

 また、潮位が高くなるとマルカンの上を流れる潮が早くなる事から、必死に泳がなければ堤防にたどり着けず沖に流されてしまうのである。
 ゆえに帰りは命がけとなる。


 ちなみに、潮が低い場合は4個中2個のマルカンは崩れ方がそれほどひどくないので歩いて渡る事ができる。

 しかし、潮が若干高くなると水位が腰の高さを超え胸付近に達するので、身体が浮いてしまう関係から必然的に泳がなければならない。
 だからこそ早めに戻らなければならないのだが、洗脳れている私は悪魔のササヤキに打ち勝つ事ができないのだ。



 当時、干潮の時だけ竿を出すのであれば危険を伴うルートではなかったが、潮が高い時に行動する際は一人では怖くて渡れなかった。
 それは、竿とタモを手に持った状態では上手く泳げないからだ。

 しかし、我々釣り師は最も安全な方法を模索する。
 運が良い事に、マルカンとマルカンの間には長方形の大きなケーソンがあり、当時、このケーソンだけは満潮時でも水面から顔を出す高さであった。

 そこでこのケーソンを利用する事を考えた。
 一人が手ぶらで約5mの距離を泳ぎケーソンを目指す。

 到着したら潮に負けず身体を一時的に固定できる場所探す。
 2箇所のマルカンにはケーソンの横だけ浅い場所があり立つ事ができるので問題はないのだが、深くて身体を固定できない場所では、片手でケーソンをつかんで海面に浮いた状態で待機する。

 身体を固定する場所を選んだら、道具を持ったもう一人をストリンガーのロープで手繰り寄せる方法を、マルカン4個分,合計4回繰り返し堤防に戻った。

 数多くの魔界の魚に出会うには、ここまで苦労する価値があったのだ。

 しかし、悪魔の作った禁断の地から逃げ帰る際、2度流されそうになり「こりゃ〜ヤバイ」と焦った事がある。
 (実際には10回ぐらい危険な目にあっている)


 その日は悪魔のササヤキに打ち勝つ事ができず、つい中廊下で粘ってしまった。
 この為、4箇所全て泳ぐパターンとなる。

 で、毎度のように私がテブラで泳ぎ、釣り仲間をストリンガーで手繰り寄せる方法で帰る事となる。

 水泳スタート!

 泳ぎはじめると、こんな日に限り潮の流れが早いことに気づく。
 流れに負けずと必死に腕と足を動かすのだが中々前に進まない。

 そして、腕と足を早く動かせば動かすほど心臓の鼓動は激しさを増し呼吸が乱れる。
 「ハッハッハッ、苦しい、ハッハッ」と頑張るが少ししか前に進まない。

 しかし泳ぐ力を緩めたら潮に流され堤防の外側に押し流されてしまう。
 ゆえに、死に物狂いで泳ぐしかないのだ!

 そして、目的地にあるケーソンにしがみつき生き返る。
 この瞬間、「こんな危険な事は二度とするまい」と思うのだが、大潮周りの野島に行くと心が乱れる。
 アハハ・・・

 必死の泳ぎが続くと体力は急激に低下する。
 そして3つ目のマルカンを泳いでいる最中に体力の限界が近い事を感じた。


   


 なんと、両腕が重く感じ腕を動かすスピードが半減してしまったのだ。
 すると身体が潮に流され始め、徐々にマルカンの端の方へ流されて行く。

 流されだしたのはマルカンのほぼ中央付近、目的のケーソンまではタッタ3mの距離。
 だが、必死で泳いでいる時にはその距離が果てしなく遠く感じた。

 「ヤバイ、このままだと沖に流される! ハッハァ、ヤバイ、ハッハァ」と、渾身の力を込めるが前に進まず更に流され続ける。

 そして、完全にマルカンの外に流された時、ゆっくりとではあるがケーソンに向かって体が進んでいる。

 「ヨシ、ガンバレ!、ハッハァ・・・」
 「もう少し、ハッハァ・・・もう少し」
 「ヤッター、なんとかケーソンにたどり着けた!\(^o^)/」

 運が良い事に、ケーソンが潮の流れをせき止めている潮裏部分に泳ぎつく事ができ、潮の流れを受けずに済んだ。

 いや〜疲れた。
 多分、10分ぐらい必死に泳いでいた。

 途中、あまりの苦しさから泳ぐのを止めてしまおうと考えたが、限界まで頑張ってみようと必死に泳いだ。
 その後、休憩時間を長めに取り、最後の難所を無事に泳ぎきった。

 この様な危険な目に遭い、自然の恐ろしさを知ったと言うのに、2,3年後同じ過ちを再び繰り返してしまう。
 そう、またしても悪魔のササヤキに打ち勝つ事ができなかったのだ!



 この時は干潮時に一人で中廊下に渡った。
 中廊下での釣果はイマイチで1,2匹しか釣れなかったが、水没しているマルカン部分でポツポツとアタリが続き、腰まで水に浸かるようなポイントで40cm以上の黒鯛を10匹以上釣った記憶がある。

 そして、潮位が上がり足が海底に付かなくなる限界まで竿を出していた。

 早めに帰ろうと決断するが、「最後にあそこだけ、もう一度そこだけ」と思い仕掛けを落とすとアタリ続いてしまう。
 この日はバラシとスッポヌケが多くキャッチ数は伸びなかったが、潮が高くなるにつれアタリの数が増えていった。

 しかし、これ以上粘ると竿と魚を持ったまま泳ぐのは不可能となる。
 仕方なく、悪魔のササヤキを無視し戻る事を決断した。

 俗に、「後ろ髪をひかれる思い」なんて表現があるが、この時はまさにその通りだった。

 まずは魚の付いたストリンガー×3本を腰に結び、危険防止用の手袋をはめて移動準備完了。
 現在いる場所は『ドック堤防・先側』から数えて3つ目のマルカンの上。

 ケーソンの端部分はだけは浅いが、この部分に立っても水位は胸近くまである。
 少し深い部分に足を下ろすと、つま先は海底に付くが歩くことは不可能。
 必然的に、毎度のように泳ぐ事となる。


   


 まずは、魚を自分の近くに手繰り寄せ、ケーソンを思い切り蹴飛ばし「ソレー!」と泳ぎだす。
 ところがマルカンの中央付近で突然失速。

 「ガーン!」
 なんと、魚の付いたストリンガーが潮に引っ張られ、頑張って泳いでも前へ進まなくなったのだ。

 感触としては、魔界の住人があの世に私を引きずり込もうと、身体を押さえ付けているかの様に感じた。

 このまま泳ぎ着くのは無理と判断。
 一旦元の場所へUターンすることにした。

 ケーソンの浅い場所まで無事戻る事ができたが、既に心臓は悲鳴を上げ激しく呼吸を繰り返す。

 「こりゃ〜、右手に竿とタモを持った状態で泳ぐのは無理だな〜」と判断。
 竿とタモをケーソンの上に置き、まずは魚だけを先に運ぶことにした。


   


 ストリンガーの付いた魚は潮に乗り流されることがわかったので、ストリンガーのひもを繋ぎ合わせ長くした。
 「よし、ストリンガーのロープがたるんでいる間に泳ぎ切る!」と心に誓い、「それ〜」と泳ぎだした。

 作戦は成功、一つ目の難所はクリアーした。
 残る難所は二つ、今と同じように渡れば何とかなると決断する。

 まずは、ストリンガーのロープを手繰り寄せ黒鯛を集める。
 そして、これから泳ぎだすケーソン側へ移動する。

 ちなみに、ケーソンの反対側に移動するもの一苦労。
 ケーソンの大きさは真上から見た状態で、縦:約1m・横:3〜4mといった感じ。

 隣のマルカンに移動するには、上を乗り越えるのは不可能。
 【干潮時】⇒端を歩いて渡る。
 イメージとしては、約1m幅のケーソンをダッコしながら、隣のマルカンの端へ、短い足を思いっきり伸ばし渡る。

 【満潮時】⇒潮位が高くなると隣のマルカンの端に足が届かなくなるので歩いて渡る事はできない。
 必然的に泳いで移動する事となる。

 泳ぐ際、竿とタモだけならばそれほど苦労しないが、この時に魚がいると大変苦労するのである。

 話は脱線したが、残る難所は二つ。
 次のマルカンは今泳ぎきった方法で大丈夫そう。
 で、ストリンガーを手繰り寄せ泳ぎだした。
 「トリャー」

   

 無事、なんとか泳ぎきった。
 が、心臓はバコンバコン。
 しばし休憩し身体を休ませる。

 次ぎ泳ぐのは最後の難所。
 最後のマルカンは半分から先が徐々に浅くなっているので泳ぐ距離が短くて済む。
 正直いって気が楽だったが、モシモを考えて呼吸を整えた。

 そして、この場所に死ぬかと思った、とんだ落とし穴があったのだ。(この文章のオチがこれから始まる)

 ちなみに、呼吸を整える為につかまっているケーソンの場所は若干浅くなっており足が地面に付く。
 しかし、これから泳ぎだす反対側は深いので足が付かないのだ。

 通常、泳ぎ始めはケーソンを足で力強く蹴り出しできるだけ遠くに進むよう心がけているのだが、この場所では少し泳いでからケーソンを蹴らなければならないので、何度となく蹴り出す行動を失敗している。

 頭の中で過去失敗した時と成功した時のイメージを思い出し、対岸に無事到着できるよう神様に祈る。


 呼吸を整え、魚を手元に手繰り寄せ準備完了。
 左手でケーソンをつかんだ状態で、右手に持ったストリンガーのロープをこれから泳ぎだす方向へできる限り前に出し、魚を潮に乗せロープから手を離すと同時に泳ぎだした。


   


 「ソレ〜」
 そして第一関門であるケーソンを蹴飛ばす場所。

 ガ〜〜ン、見事に失敗!\(-o-)/
 左足のつま先だけがケーソンをかすっただけとなった。


   


 こうなれば必死に泳ぐしかないと懸命に頑張るが、泳ぎだしてまもなく足に変な感触が伝わる。
 「ヤバイ・もしかしたら・・・」と最悪な状況が脳裏をよぎる。

 皆さんお分かりですね!(~o~)b
 そう、ストリンガーのロープが足に絡み始めたのです。

 「こりゃヤバイ」と思っても、泳ぐのを止めれば潮に流され沖合いに出てしまう。
 「こうなりゃこのまま泳いでしまおう!」と必死に頑張るが一向に進まない。

 「なぜ必死に泳いでいるのに進まないのだろう??? 悪魔の仕業?」と考えはじめた。
 そうこうしている内に、足に黒鯛がぶつかり始めた。

 で、黒鯛のヒレが足に当たる。
 「イテテ・・・、ハッハァ苦しい・・・イテテ」って感じ。

 まるでギャグ映画を見ているような間抜けな状態となった。
 アハハ・・・


 魔界の魚の逆襲は更に続く。
 ストリンガーにぶら下がっている10匹以上の黒鯛は、足に絡んでいる一団と沖方向へ引っ張っている一団があるように感じた。

 なので、いくら一生懸命泳いでも一向に進まないのである。
 「もうダメ、心臓の限界! このままでは死ぬ!」と思い、泳ぐ事を諦め立ち泳ぎに切り替えた。
 
 自分の身体は潮に流されマルカンの外側に少しずつ流されて行く。
 「このまま沖に流されるんだな〜」と、岸に辿り着く努力を完全に諦めたのだった。

 その時、つま先に岩のような物が当る。
 「アレ?」

 その瞬間ひらめいた。
 この場所にはマルカンの外側にケーソンが2個沈んでいると・・・。

 そして、運良く両足をこの場所に付くことができたが水面は胸の位置。
 半分身体が浮いているような状態なので、ゆっくりと呼吸を整えるのは無理であった。

 いつこの場所から流されるかわからない状況、急いで岸に向かって泳ぐ準備をする。

 で、足に絡んでいるロープを解こうとするが、足に絡んだロープが腰から伸びるメインのロープと絡まっており、不安定極まりないこの場所で解くのは無理そうなので諦めた。

 続いて、沖で優雅に泳ぐ黒鯛のストリンガーを引っ張り寄せ、沈みケーソンを思い切り蹴り出した!
 「それ〜」

 「ハッハッ、苦しい、ハッハァ・ハッハァ・・・」と必死に泳ぐ。
 で、無事浅い部分まで辿り着いた。
 「ハ〜疲れた」、無事生還! \(^o^)/


 丁度良い具合に上り下りする堤防の角付近に釣り人はおらず、恥ずかしい姿を見せる事はなかったが、堤防にストリンガーを結ぶ為に一旦登ろうとした時、釣り人がやってきて大量の黒鯛を見てビックリ。
 「スゴイですね〜〜」と・・・。

 この返答に対し、「いや〜この黒鯛のせいで魔界に連れて行かれそうになりました!」とわけのわからないことを言いたかったが、「今日は珍しく釣れました!」と笑顔で答えた。

 この後、ストリンガーをこの釣り人に預け、ベストとカッパを脱ぎ、海水パンツ一丁でケーソンの上に置いてある竿を泳いで取りに行った。

 身軽になると泳ぐのは簡単!
 呼吸は上がっていたが、苦労することなく竿を回収できた。


 ちなみに、必死で泳いでも前に進まない理由は潮の流れ以外に服装の問題がある。

 実際、海水パンツ一丁で泳げば苦労することなく泳げる距離。
 しかし、あらゆる場面で、貝類の付着している部分に自分の身体が接触する危険があるので、怪我を防止するためにカッパと手袋を着用する必要がある。


 一度、『楽に泳ぐこと優先』で海水パンツ&ベストだけのスタイルで挑戦したが、案の定、全身キズだらけとなり背中や肩の後ろ部分からも出血した。

 こんな時に限り魔界の魚は釣れないもので、堤防に上がった際、キズだらけの身体を見た釣り仲間に「映画ランボーみたいにキズだらけじゃない」と大笑いされたことがある。(~o~)


 話は横道にそれたが、危険防止との理由からカッパと手袋はなにがなんでも着用しなければならない。
 しかし、カッパは水の抵抗を受けやすく、返って前に進もうとする泳ぎを邪魔する。

 一時、ダイビングで使うウエットスーツも考えたが、更に危険な行動を悪魔に指示させそうなので、危険を伴う行動はできるだけ自重しようと思い購入を止めた。

 でも、あのまま沖に流されていたらストリンガーのロープを解いて捨てたんだろうな〜?
 それとも、魔界の言葉で黒鯛に話しかけ、堤防まで引っ張ってもらうようお願いしたかな〜?

 いやいや、話しを聞いてくれたとしても何度も蹴っ飛ばしちゃったからイヤダって言われそう。
 アハハ・・・

 END



★追記
 この文章を編集していて、過去の出来事を色々思い出した。
 すると、この文章にある釣り仲間と苦戦した記憶が5,6回、一人で苦労した記憶が3,4回ある。
 もちろん苦労しないで泳いだ事は数しれず。

 アハハ・・・
 ヤッパ俺は頭がおかしい。

 とゆうか〜、自分自身で『危険な体験』との認識が全くなく、「沖に流されて当然、流されてもなんとかなるさ!」との発想が頭の中にあるので、過去の記憶が瞬時に思い出せないのだ。

 やはり、魔界の恐怖? 悪魔の洗脳?
 いやいや、「愛するクロちゃんに一匹でも多く会いたから」、そう、「愛」の一言なのである。




 【魔界の魚 黒鯛  野島堤防偏.PertV】へ続く